
顎関節症は、顎の関節や周囲の筋肉に異常が生じ、さまざまな症状を引き起こす疾患です。顎関節は耳の穴の前あたりに位置し、口の開け閉めに欠かせない役割を担っています。
発症の原因は一つではなく、歯ぎしり・食いしばり、噛み合わせの問題、ストレス、頬杖や横向き寝といった生活習慣、外傷など、複数の要因が絡み合うことが多いとされています。近年はスマートフォンやパソコンの長時間使用による姿勢の乱れも関係していると考えられており、現代人に増えている疾患の一つです。
口の開け閉めや咀嚼、あくびの際に、顎の関節や周囲の筋肉に痛みが生じます。耳の前・こめかみ・頬のあたりに痛みを感じるケースもあります。
指が縦に3本入らないほど開口できない状態を「開口障害」と呼びます。重度の場合は、指が2本も入らないことがあります。
口を開け閉めする際に「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音が生じることがあります。痛みを伴わない場合でも、放置すると症状が進行する場合がありますので、気になるときはお早めにご相談ください。
以前と噛み合わせが変わった感覚がある、上下の歯がうまく合わない、咀嚼時に顎が痛むといった症状が現れることがあります。
頭痛、首・肩のこり、耳鳴り、めまい、目の疲れなど、全身に影響が及ぶことも少なくありません。耳鼻科や整形外科を受診しても原因がはっきりせず、顎関節症と判明するケースもあります。
症状や原因に応じて、複数の治療法を組み合わせて診療にあたります。
マウスピース療法 夜間に装着するスプリント(マウスピース)を作製し、歯ぎしりや食いしばりから顎の関節・筋肉を守ります。顎へのかかりすぎた負担を和らげ、症状の改善を図ります。
筋機能療法 顎周囲の筋肉をほぐすマッサージやストレッチ、開口訓練などを行います。筋肉の過度な緊張を緩和し、痛みや開口障害の改善につなげます。
漢方治療 痛みや炎症を抑える漢方薬を処方します。西洋医学的な治療と組み合わせることで、より幅広い症状への対応が可能です。
生活指導 日常生活の中で顎に負担をかける習慣を見直していただくためのアドバイスを行います。硬いものを控える、頬杖をつかない、うつ伏せ寝を避けるなど、具体的なアドバイスをお伝えします。
マウスピースや筋機能療法では十分な改善が見られない重度の歯ぎしり・食いしばりに対しては、ボトックス治療も選択肢の一つです。咬筋への注射により筋肉の過剰な緊張を抑え、症状の軽減を図ります。
効果の持続期間は3〜6か月程度で、継続的に治療を受けることで発達しすぎた筋肉の状態を改善し、エラの張りが目立ちにくくなる効果も期待できます。
目視による観察、口腔周囲の筋肉の触診、パノラマレントゲンでの下顎角の形状確認を組み合わせて診断します。下顎角の形が角ばっている場合、歯ぎしりや食いしばりが強い可能性があります。必要に応じて歯科用CTによる精密検査も行い、総合的に判断します。

いつ頃から症状があるか、どのような状況で痛むか、過去に顎を打ったことがあるか、歯ぎしりや食いしばりの自覚があるかなど、詳しくお伺いします。
口の開き具合、顎を動かした際の音、筋肉の硬さや圧痛などを確認します。パノラマレントゲンで下顎角の形状を調べ、歯ぎしり・食いしばりの有無を判断します。
検査結果をもとに顎関節症のタイプと重症度を判断し、最適な治療法をご提案します。マウスピースの要否、筋機能療法の内容、生活習慣の改善点などについて、丁寧にご説明します。
マウスピース療法を行う場合は、歯型を採取してマウスピースを作製します。完成後は装着方法とお手入れの仕方をご説明し、夜間にご使用いただきます。筋機能療法では、マッサージやストレッチの方法をお伝えし、ご自宅でも継続していただきます。
定期的にご来院いただき、症状の変化を確認します。マウスピースの調整や治療方針の見直しを行いながら、症状の改善を目指します。
症状が落ち着いた後も、再発予防のために定期的なチェックをお勧めしています。生活習慣の見直しを継続することも、長期的な安定につながります。
硬いものを控える せんべいやフランスパン、スルメなど硬い食べ物は、顎に大きな負担をかけます。症状のある間は、なるべく柔らかいものを選ぶようにしてください。ガムの長時間咀嚼も避けることをお勧めします。
大きく口を開けない あくびや大きな笑いの際に無意識に口を開けすぎてしまうことがあります。顎関節症の症状がある場合は、手を添えて開口量を抑えるよう意識してください。
頬杖をつかない 頬杖の習慣があると顎に偏った力がかかり、関節や筋肉への負担が蓄積します。意識的に見直してみてください。
寝姿勢に注意する うつ伏せ寝や横向き寝は顎に圧力がかかります。できるだけ仰向けで寝るようにし、枕の高さも確認してみてください。高すぎる枕は首への負担を増やし、症状を悪化させることがあります。
ストレスを上手に発散する ストレスは歯ぎしりや食いしばりを引き起こす一因になります。適度な運動や趣味の時間など、ご自身に合った方法でこまめに発散するよう心がけてください。
正しい姿勢を保つ スマートフォンやパソコンを長時間使う際は、姿勢に気をつけてください。猫背や前かがみの姿勢は首や顎への負担を増やします。
日中の食いしばりに気づく 日中、意識せずに歯を食いしばっていることがあります。上下の歯が触れていないか定期的に意識し、顎の力を意識的に抜く習慣をつけることが大切です。
多くの場合、適切な治療と生活習慣の改善により症状は改善します。ただし、回復の程度は症状の重さや期間によって異なります。早い段階でご相談いただくほど、改善の見込みは高くなります。
症状の改善に伴い、使用頻度を徐々に減らしていくことが可能です。ただし、歯ぎしりや食いしばりの癖が完全になくなるわけではないため、再発予防の観点から引き続き使用をお勧めする場合があります。
症状の程度や原因によって異なります。軽度であれば数週間から数か月、重度の場合は半年以上かかることもあります。経過を確認しながら、着実に治療を進めていきます。
はい、お子さんにも顎関節症が起こることがあります。スマートフォンやゲームの長時間使用、歯並びの問題、ストレスなどが要因となるケースがあります。顎の痛みや音が気になる場合は、お早めにご相談ください。
顎関節症は歯科領域の疾患であり、噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりが原因であることが多いため、歯科医院での診断と治療が基本となります。整体・整骨院の施術が症状緩和に役立つ場合もありますが、まずは歯科医院で正確な診断を受けることをお勧めします。